ついに全国学生大会での予選が終了しました。保坂はこの全国で決勝に行くことだけを目標に、大学生活の醍醐味である飲み会も旅行も女の子とのデートも、全てを捧げてきました。私の選手番号は12番。さあ、いよいよ予選通過者の発表です!
~~~~~~~~
予選が終わり、私たち選手はステージ裏の控室に通されました。
私は一人でその部屋の入口付近に座り込んで、ぼんやり天井の灯りを眺めていました。
やれることはやった、気がする。
これ以上ないくらい頑張った、気がする。
この一年間は、とにかく無我夢中でした。
自分が正しいと信じたトレーニング、食事を続けて、減量すること半年以上。
空腹で眠れない夜は確かにありましたし、あまりの疲労に学内で倒れ込んだこともありました。
うん、確かに頑張った!
そう思って、また天井を眺めました。
ふと、選手控室の中にいる選手たちを見渡すと、わいわいがやがや、なんとも楽しそうです。
彼らはピックアップ審査には呼ばれず、審査員たちから”決勝進出確定”を得た選手です。
さらに羨ましいことに、毎年優秀な選手を輩出している日本体育大学や早稲田大学、東京大学の選手たちにはなんとセコンドやアシスタントが付いており(彼らもちゃんとマッチョ)、この待ち時間でも後輩に運んでもらったダンベルでパンプアップをして、なにやらドリンクを飲んでいました。
遠い北の地方からやってきた保坂には、そんなことをしてくれる仲間はいません。
いいなあ羨ましい、そんなことをぼんやりと考えていると、突然スーツを着た運営の方が部屋に入ってきて言いました。
「はい、決勝に進出された選手のゼッケン番号を読み上げます」
緊張!一瞬で控室が静まり返ります。
当然です。この大会にかけてきた選手はぼくだけではありません。全員がそれぞれの思いを抱きながらこの場に立っているのですから。
「…番、…番、…」
保坂の番号、12番が近づいてきます。
さあ呼ばれろ!呼んでくれ!!
「…9番、13番、」
!?飛ばされた!!!
うおーー!まじかーーーーー!
聞き間違いではありません。
この瞬間、私が大学生活のすべてをかけてきた「全国決勝進出」の目標は静かに、しかし確実に崩れ去りました。
この当時の保坂は大学4年生。この学生大会に出場できる機会はもうありません。
届かなかった。
私は口を半分空けたまま俯いて、呆然と、ただ呆然と床の模様を眺めていました。
でも、負けはしましたが、確実に私は去年より成長していました。
ピックアップ審査に3回も呼ばれて、審査員に最後の最後まで比較していただいたのです。
トレーニングを始めてからおよそ1年と半年、自力でよくこの全国大会に噛り付きました!
お疲れ様でした!保坂! えらいぞ、保坂!!自分を労うんだ!
ああ!!無理!!!
そんなこと思えるかい。
こっちは結果が欲しかったんじゃ。
セットしていた髪をぐちゃぐちゃにかきむしり、コスチュームを着替え、その場に持ってきていたお菓子をすべて開けてがっつくようにむしゃむしゃ食べます。
ああ、決勝に行きたかったなあ。
すごいなあ他の選手は。すごいなあ。かっこいいなあ。
お菓子をかじりながら選手控室を出て、そのまま観客席へと向かいます。
決勝に行った選手たちの雄姿を、この目に焼き付けるために。
どうすれば勝てるのか、次は何の大会に出ようか。
この全国大会に出るまで、寝ても覚めてもボディビルのことばかりを考えてきました。それはもう寝てる間にもトレーニングをする夢を見る程です。
減量はつらかった。トレーニングに行きたくない日もあった。あまりの疲労で歩けなくなったことも、コンビニのスイーツコーナーで1時間指をくわえて佇んでいたことも。
それほどまでに夢中でボディビルに打ち込めたのは、貴重な経験でした。
ボディビルに出会えて、本当に良かったと思っています。
とりあえず、エッグスンシングスに行って、山盛りのパンケーキを食べてきます。胃腸が弱っているかもしれないので、エビオス整腸剤と太田胃散を忘れずに。
これで、私がボディビルを始めてから大学を卒業するまでのコンテストの話はおしまいです。
私がここからどのようにしてボディビルキャリアを歩んでいくのか、それはまたのご機会に。
————
あなたの身体のコンシェルジュ
Kazuki Hosaka HEALTH LAB 市ヶ谷
カズキホサカヘルスラボ 市ヶ谷
〒102-0074 東京都千代田区九段南4丁目7−24 トゥーラント88ビル 102号室
トレーニング・ダイエット・ストレッチ・ボディメイクのことなら千代田、市ヶ谷の当店へ!
パーソナルジム
パーソナルジム 市ヶ谷
【最寄り駅】市ヶ谷 四ツ谷 九段下 麹町 半蔵門から徒歩圏内