優しいマッチョに導かれ、保坂はボディビル部に入部します。しかし私がなりたいのはゴリマッチョではなく、スリムな細い身体。

それなのに先輩に誘われたベンチプレスを断りきれず…!?

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大学3年生でボディビル部に中途入部した私は、当然ながらたいしてトレーニングの経験もなければ知識もなく、身体と言えばなけなしの筋肉の上にぽよっと脂肪が乗っている状態でした。

そんな私は、先輩マッチョや年下マッチョの部員たちにしっかりビビっていました。

そもそも私はマッチョになりたくないのです。

だって、スタイリッシュな細い体型のほうが服を着こなせますし~。
世の風潮として、細マッチョのほうがウケるじゃないですか~。

当時はその思いが強かったため、断じて筋肉をつけるものかと、半ば意地になっていました。このぽよっとした脂肪が取れれば、別にそれでいいんだけどナー。

そんな保坂の気持ちはつゆ知らず、

「ベンチやってみる?」
「マイプロテイン飲んでる?」
「BIG3の計測しない?」

優しいマッチョたちは話しかけてくれますが、あまりにも初心者すぎる私には何を言っているのかすらわかりません。

(私は!マッチョになりたいのではなく!ちょっと痩せたいだけなのですが!!!)

とはとても言えないので、

「あ、ベンチやってみます~( ᐕ)アハハハ」

などと、お茶を濁しながら、
(早く幽霊部員になって、この部活やめなきゃ)
とボディビル部内の反逆者ユダとして、固めに拳を握っていました。

先輩「ベンチプレスは初めて?」
ぼく「はい!(ヤケクソ)」
先輩「じゃあ、まずはそこのベンチ台に寝っ転がって」
ぼく「はい!(ヤケクソ)」

ベンチプレスというのは、台の上に仰向けになって胸や腕の力でバーベルを持ち上げる、あれのことです。

ジムでやっている人を見かけたことはありましたが、実際にやるのはこれが初めてでした。

「まずは40kgから始めようか」と言われ、バーベルに小さめのプレートを付けてもらいました。
チラっと横を見ると、隣では同じくベンチプレスをしている年下の部員が、もっと大きなプレートをつけてスイスイ上げ下げしています。

(フッ…なめられたもんだぜ…笑)

やれやれ、さっさと終わらせて帰りますか。
などと思って、さて40kgでベンチプレスをしてみようと力を入れたところ、

んん!?重っ!!!動かないのだが!!??

意外!細く小さく見えたそのバーベルは、割と本気で力を入れても少し動くかどうか、全くのトレーニング初心者にはあまりにも重かったのです。

異変に気づいた先輩がすぐにレスキューしてくれました。

先輩「ちょっとまだ重すぎたかもね~」

完全に他人事の先輩の言葉は、あまりの出来事に衝撃を受けている私の耳には入りません。私は、こんな小さなバーベルさえ持ち上げられない自分の非力さに非常に愕然としていました。

直後、次のような思いが保坂をよぎります。

「…別に、重くねーし…」

出、出た~~~!
めちゃくちゃ負けず嫌いなやつ~~~~!!

ここで自分の性格を皆様にもお話ししますと、私は大変な負けず嫌いなのです。
しかし時すでに時遅し、私は「この40kgのバーベルを持ち上げるまで、家に帰らないぞ」モードに入っていました。

結局その日は、その40kgのバーベルを一回上げるためだけに、3時間以上ジムにいました。

もう、自分の性格が嫌になる。

私は子供の頃からずっとこうなのです。
できないことがあるのが、悔しくて悔しくて、ついムキになってしまうのです。

これが保坂のバースデイ。

私の中から「スリムなボディになりたいな~」という願いは完全に消え失せ、ただ重いバーベルを持ち上げることだけが望みの、トレーニング戦闘機へと変貌を遂げた瞬間でした。

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